のじめじめする、うす暗い部屋だ。半間の床の間に、投げ入れた金雀枝《えにしだ》がさしてあった。
 一空さまが、柘植の家がもとこの和泉屋の持ち主で、宗庵の死後、娘のおゆうが采配《さいはい》をふるっていたはずなのが、それもなくなったのち、どうして柘植の家から離れるようになったのか、そこの関係はいまどうなっているのかと伊之吉にきくと、伊之吉は少なからず驚いたようすであったが、それでも、こころよく、知っている限りのことを話してくれた。
 おゆうの娘のお高というものが生きていて、貧しくしているので、お高のものであるべきおゆうの財産はいまどこへどう行っているのか、それを審《しら》べるための、これもその一つであるということも、もちろん一空さまは、伊之吉にうち明けたのだ。一空さまも柘植姓であること、じぶんとおゆうとのつながり、それらのことも、一空さまは、あますところなく伊之吉に告げた。
 すると、伊之吉が答えた。
 それは簡単なはなしだった。

      二

 だいぶ昔のことで、伊之吉は人のうわさに聞いたに過ぎないのだけれど、おゆうは、良人の相良寛十郎と、ふたりのあいだの、生まれてまもない娘をつれて
前へ 次へ
全552ページ中379ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング