様を見て、むりににっこりした。


    金雀枝《えにしだ》


      一

 一空さまは、鳥獣のような、自然に即した生活をしていた。それは、およそ贅沢から遠いものだった。壁とたたみと天井のほか何一つない洗耳房なのだ。金剛寺境内の樹木が、高塀のようにそれを囲んでる。
 一空さまは、若松屋のお高が雑司ヶ谷の鬼子母神へお詣りに行った翌朝、房の縁に座を組んで、日光に顔を向けていた。いつでも、どこででも、独居していても人中でも、随意に坐禅《ざぜん》の三昧《さんまい》に沈入するのが、一空さまなのだ。
 からりと晴れた日だ。土が光って、陽に夏のにおいがしてる。一空さまは眼をあげて、膝もとに置いてあった手紙を拾い上げた。一空さまの眉《まゆ》が寄るのは、お高に会って、それから柘植の一家と、ことに、彼女の母のおゆうのことの出たのを、いまだに奇縁に思っているのだ。この柘植一族の神秘を解くためには、古い書き物をあさったり、あちこち歩いて人に会ったりしなければならない。
 一空さまは、金剛寺へ出入りする棟梁《とうりょう》に、和泉屋の本店はどこにあるのか調べてくれと頼んでおいたのが、けさ、その棟梁のもと
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