それにそそられているじぶんを意識した。こころに関係なく、肉体を走りすぎるおののきであった。忘れた磯五のにおいを、その笑い声がお高の中に呼び起こしたのだ。
 お高は、蒼くなっている顔をふり向けた。吸われることを望んでいるように、くちびるがすこしひらいていた。
「おせい様はおめえが大好きなようだぜ」磯五が、いっていた。「遊びに寄りなよ。すぐそこの寮に来ているのだ」
「知っていますよ。知っていますけれど、顔出ししなければならないわけが、どこにあるのですか。あの、妹さんとかいう女ごろつきはどうしましたか。教えてくださいよ」
「お駒ちゃんか。お駒ちゃんは店の用で京へ行っているのだ。おれがつれて行って、おれだけ一足先に、五日前に帰《けえ》ったばかりよ。またすぐ行かなくちゃならねえのだ。高音、おめえお針のおしんに神田とかで会ったそうだが、おしんばかりじゃあねえ。誰にあっても、おれのことあいわねえようにしてもらいてえのだ。よけいなことをいうと、おめえのためにも、あの若松屋の盲野郎のためにもならねえのだから」
 お高は、馬鹿ばかしいことをいうというように、黙って横を向いていた。何もいわずにいるときは、今
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