け帰った。
 磯五は、商売物の洒落た衣類をつけて、いつもの頭巾《ずきん》の下から、瀬戸物で作ったような、すべすべする美しい顔をのぞかせていた。何か桃色の花のついた木の枝を持って、しきりに花をむしりながら、あきれたように、着物を直すお高を見守っていた。
 急に眼を上げて、お高は、磯五を見返した、にらむような眼であった。お高は、磯五にじろじろ見られるのが気になって、怒っているのだった。磯五は、そのお高の視線をしっかり受けとめて、例の、深いえくぼ[#「えくぼ」に傍点]を見せて拝むような微笑になった。この微笑のためには死んでもいいと思った昔のじぶんを、お高は思い出していた。同時に、自分の装《みなり》のみすぼらしいのが、磯五の前にたまらなく恥ずかしくなってきた。
「こんなところで何をしているのだ」
 磯五がきいた。
「何をしていてもいいじゃありませんか。鬼子母神さまへお詣りに来たのですよ。もう帰るのですよ」
 そして、往来の見えるほうへ歩き出そうとした。
 磯五は、声をたてて笑っていた。それは、忘れていたさわやかなひびきであった。不思議な魅力をもってお高の胸をついてくるものであった。ふとお高は、
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