た。安定をとるために腰を下げて、両腕をひろげて、右左にふらふらしていた。聞こえないまでも人を呼ぼうかと思ったが、大声を出すとバランスがくずれそうなので。どうすることもできないのだ。水の上は風があって、それが着物の前を吹きひらいて脚《あし》が出ているのを知っていたが、直そうとする拍子に落ちるような気がして、お高は風のするままに脚をあらわして泣き出したい心で立ちつくしていた。
橋のむこう岸に人影がさしたので、お高は、はっとした。あぶな絵のようなありさまの自分だから、それが男でなくて女であってくれればいいと思ったが、男であった。磯五であった。磯五は、そこの橋の上に立ち往生をして下から吹き上げる風のために面白いけしきになっている女を、お高とは知らずにゆっくりと見物しはじめたが、やがて気がついて驚いた声を放った。
「高音じゃアないか。何をそこで珍妙な芸当をしているのだ」
四
お高のことをもとの名の高音と呼ぶのは、磯五だけであった。お高は、磯五にあったのはいやであったが、いやでも、助けてもらわなければならなかった。磯五は、笑いながら向こう側から渡って来て、すぐお高の手を引いて助
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