お高はまるで森の奥へ迷いこんだような恰好になってしまった。日光が白く降り注いで、かすかな風が渡ると、木の枝を離れて虫のむれが飛び立つのが見えた。
 お高は、引っ返したかったけれど、引っ返すよりは先へ行ったほうが早く街道筋へ出られるであろうと思って、そのまま進んで行った。お高は、蛇《へび》が出てきはしないかと思ってこわかった。人の気がないので裾をかかげて、ぬかるみを拾うようすで草を分けていた。白いふくらはぎが、青い葉のあいだをちらちら動いていた。
 小川へ出た。冷たそうな水が、ゆるく流れているのだ。向こう側は、いっそうたけの高い藪原になって、驚くほど大きな蠅《はえ》が飛んでいた。その羽音が耳に聞こえる全部で、静かな地点であった。お高はいつまでもそこにいたかったが、その寂然《じゃくねん》としているのがかえって恐ろしくなって、いそいで、そこにかけてある独木橋《まるきばし》を渡りかけた。
 それは、立ち木の朽《く》ちたのを投げ渡しただけのあぶないものであった。お高は、踏みためしてもみずにその一本ばしを渡りかけたので、真ん中でぐらぐらし出して、あとへも先へも行けないことになった。お高は夢中であっ
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