ございますよ。おせい様はときどきおみえになりますです。今も、保養かたがた来ておいでですよ」
お高は、きょうのせっかくの行楽と、このいい景色にしみ[#「しみ」に傍点]がついたように思われて、情けない気がした。おせい様がここの寮に来ているなら、磯五も来ているであろうと思った。そして、遠くないところに磯五がいると思うと、お高は、胸がわるくなるように感じて、すぐに国平を促して帰りたかった。
が、そうもいかなかった。お高は、国平が眠っているあいだ、そこらを歩いてくることにしてその庄之助さんの家を出た。人と話しながら、あたまの中でほかのことを考えるよりも、お高は野路《のみち》でも一人でたどって考えたいことを考えたかった。何よりも、その甘美な空気を吸って、思い切って巷《まち》を出て来た目的を存分に果たしたかった。
お高は畑の畦《あぜ》に雑草のはえている道を通って、御鷹《おたか》部屋御用屋敷のある一囲いのほうへ歩いて行った。そこらはもう畑といってもだんだん藪つづきになっていて、人に踏まれて草の倒れているあとが一すじに黒く延びているだけで、進むにしたがって両側の灌木《かんぼく》のせいが高くなって、
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