解答があらわれているかのように、まじまじとお高の顔を見て、黙りこんだ。お高もそういう一空さまの顔から何かを得ようとするように、視線いっぱいに相手をみつめているのだ。
二
若松屋惣七と歌子と紙魚亭主人と大久保の奥様は、片瀬の龍口寺へお詣りに行く行くといって、まだ同勢がそろわないでそのままになっていた。お高は、からだの調子が、そういう二、三日がけの旅を許さないので、行かないことにした。
しかし、若葉の風が袷《あわせ》の裾《すそ》をなぶるころになると、お高も、紺いろの空の下を植物のにおいに包まれて歩いてみたいこともあった。一度、神田橋外の護持院《ごじいん》ヶ|原《はら》のかこいが取れたので、佐吉をつれて、摘《つ》みくさに行ったことがあった。その摘み草が大へん面白かったので、お高は、また一日どこかへ遊びに行きたいと思っていた。若松屋の仕事がひまで、お高もからだを持ちあつかっていた。冑《かぶと》人形、菖蒲《しょうぶ》刀、幟《のぼり》の市《いち》が立って、お高は、それも見に行きたいと思ったが、二十七日は、雑司《ぞうし》ヶ|谷《や》の鬼子母神《きしもじん》[#ルビの「きしもじん」
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