あった」
 お高は、眼をぱちくりして黙りこんだ。
 一空さまの話では、父の相良寛十郎も、その、おゆうの和泉屋経営に一部の仕事を受け持ったというのだ。ところが、お高の知っている限りでは、父は商法などからはおよそ遠い人物で、そんなことがあったとは、どうしても考えられなかった。
 無言でいると、なおも一空さまがいうには、和泉屋は、おゆうの財産のほんの一部分で、ほかにも、家作や地所などふんだんに持っていたというのだ。こうなると、まことにおゆうは江戸有数の富豪だったといえる。お高は、そのおゆうの娘なのだ。お高は、夢の中で夢をみているような、奇異な気もちになっていった。

      六

 お高の母の父は、柘植宗庵《つげそうあん》といって、町医であった。それは、お高も知っているのだが、同時に、お高の知っているのは、それだけであった。
 ところが、一空さまの語るところによると、この宗庵先生はただの町医ではなく、長崎で蘭人《らんじん》に接して医学を習得しながら、大いに密輸入をやったらしい。しまいには、医者よりもこのほうが本業になって、大いにもうけた。
 こうして、あぶない橋を渡って大利を獲たばかりで
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