空さまが、冗談だといって笑い出すであろう、そうしたら、いっしょに笑いましょうと思って、一空さまの笑い出すのを待った。が、いつまで待っても一空さまが笑い出さないので、お高は、ひとりで笑い出した。
「何のことでございますか、わたくしには、わかりませんでございますよ。十七軒のお店が、そっくりわたしのものでしたら、わたしは、江戸で名代の金持ちのはずでございますねえ」
 一空さまは、にこりともしないのだ。
「そうじゃ、あんたは、江戸で名代の金もちなのだが、じぶんでそれを知らんようだから、わしは、しらせに来たのじゃよ」
「さようでございますか」お高は、どこまでも相手になろうとはしなかった。
「それはどうも、御親切にありがとうございます」
「わしのいうことを、信じなさい。いくらわしが酔狂だからというて、藪《やぶ》から棒に、かような戯談を持ちこんで参るわけがないではないか。和泉屋は、そっくりおゆうさんのもちものであった。おゆうさんが蔭《かげ》におって、それぞれの者に、十幾つの和泉屋をやらせておったのだ。何から何まで、おゆうさんの金で商売をして、もうけはそっくりおゆうさんのふところへはいる。豪儀なもので
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