したよ。馬に蹴られそうになった子供を助けて、女が気を失っているというから人をわけて来てみたら、お前さまだったのです」
「理窟《りくつ》ではできることではない」一空さまが、うけ取った。
「えらかったな、お高さん」
 一空さまは、お高を誇って、ほそい眼をかがやかしているのだ。お高は、この坊さまは、世の中にたった一人のじぶんの親身なのだと思い出して、できることなら、いきなり取りすがって泣き出したかった。
 金剛寺門前町には、まだ人出が引いていなかった。が、それは、一段落ついたあとのしずかさに、あった。近所の人々が、騒ぎのあとを見て歩いたり、いつまでも立ち話をつづけていたりして、なかなか家へはいらないのだった。
 和泉屋の前は、引き出された商品のこわれが、こなごなに踏みつぶされて、足のやり場もないほど散らばっていた。おもての雨戸はすっかり破られて、家内《なか》も、空家《あきや》のようになっていた。ところどころ壁まで落ちて、まるで半倒壊のありさまだった。
 お高は、滝蔵に助けられて、そこを歩いて行った。一空さまは、門前町の端まで送って来て、そこで別れて、洗耳房へ帰って行った。白い月光の中に、通行
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