いる。何か重い固い物が、あたまの上へのし[#「のし」に傍点]かかってきたのまでは意識しているが、あとは、天と地が逆になって、周囲が、お高のまわりで急旋回した。それだけの記憶だ。
 お高は、水のにおいをかいだ。
 誰かが抱きかかえて、誰かが、彼女の口へ水を注いでいるのだ。襟元《えりもと》がひろげられて、水が、乳のあいだを伝わって、濡らした。お高は、眼を上げた。お高は、一空さまによりかかっているのだった。水を飲ましているのは、屋敷の滝蔵だった。
「ありがとうございました。ほんとに、もうようございます」
 そういうと、不思議に、ほんとに何ともないような気がして、お高はたち上がろうとした。すこし、足がふらふらした。
 ぼろぼろに着物をやぶいて、奮闘の名残《なごり》をとどめた男がふたり通りかかった。
「おい、この姐《ねえ》さんだよ。お留坊《とめぼう》を助けたのは。いまみんな話し合っていたろう?」
 お高を指さして、立ちどまった。滝蔵が、お高に肩を貸そうとしていた。
「あぶねえところだったのです。わっちがお迎《むけ》えに来たときは、もうあの人で、どこにいなさるか、探すこともできねえ始末だ。心配しま
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