えへ、いきなりその瓦が舞い落ちてきたのだ。瓦に打たれた者の悲鳴が、けたたましい笑い声のように、長く尾を引いた。打たれたのは、群集中の少年であった。人々は、地面が割れたように飛びのいて、屋根をふり仰いだ。そこへ、屋上に突っ立った男の手を離れて、二枚、三枚、四枚と、つづけさまに瓦が落下してきた。
 それは、眼まぐるしい速力で矢つぎばやに飛んでくるのだ。しかも、往来の、各ちがった方面へ落ちてくるので、群集は、本能的にあたまをかかえて散り出したものの、全く逃げ場がないのだ。見るまに、そこここに瓦に打たれて倒れたり、うずくまる者が出てきた。
 地におちた瓦は、炸音《さくおん》をたてて割れ散った。人々は、怒号と叫喚のうちに、たおれる者を踏み、よろめく者を排して、皆、和泉屋の側の家なみの下をめざしてわれ勝ちに游《およ》いだ。
 それは、津浪がくずれかかるような、力強いひしめきであった。あとの路上は、瓦を脳天にくらった者の即死体や、肩を割られてうずくまった者のうめきや、それらの者をかかえて走ろうとする肉親の人や、逃げ遅れてうろうろする者の姿のほか、掃《は》いたように、一度に無人になった。
 お高は、火
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