二

 混乱の上に、夕風が立った。暴動――それはもう暴動といってよかった――は、拡大する一方である。この、戦争のような地上に引きかえて、空は、残映から夜へ移ろうとして、濃紺と茜《あかね》との不可思議な染め分けだ。ゆうやけは徐々に納まって、水のような深い色が、ひろがりつつある。白い月だ。星も、白いのだ。
 薄暮が落ちてくるにつれて、お高は、だんだん恐怖を感じ出した。この騒ぎがいつまでもつづくようだったら、じぶんは一晩じゅう家へ帰れないで、ここに立ちつくさなければならないのだろうか。その不安だ。お高は、蒼い空気の中で、土を蹴って馳駆《ちく》し狂闘している人々を、なさけない眼で見はじめた。
 すると、一時にあちこちにわめき声が起こった。いつのまにか一人の男が、和泉屋の屋根をはっているのだ。その男は、夜盗のような身軽さで、山形になっているてっぺんへ上って行った。群集は、はじめ仲間のひとりであろうと思って、下から歓喜の声を吹き揚げて声援した。男は、腰から、何か道具のような物を抜きとって、瓦をはがし出したので、群集はいっそうよろこんだ。
 ところが、そうして喝采《かっさい》している群集のう
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