《ぼたん》の花の文身《いれずみ》が咲いていた。
叫び声は、いっそう高くなった。顔いっぱいに口がひろがっている化け物のような人の顔が、お高の視野をうずめていた。お高は、やっとのことで、和泉屋の隣の糸屋《いとや》の軒下へ走りこんだ。そこには、騒動を見物する人が、土間まではいり込んでいた。お高を見つけた糸屋の若いおかみさんが、人をかき分けて出て来た。
「まあまあ、若松屋のお高さま、どうも大変なことになりましてございますねえ」おかみさんはおどおどして、声がふるえていた。「飛ばっちりをくってはたまりませんから、なかへおはいりなさいましよ。もうすこし鎮《しず》まりましてから、小僧をつけてお送りいたしますよ」
おかみさんが夢中でぐんぐん引っぱるようにするので、お高はよっぽど、しばらくこの糸屋の店に避けていようかと思ったが、もしこの騒ぎから火事にでもなったときのことを思うと、一刻も早く金剛寺坂の家へ帰っていたかった。お高が、そういって辞退しているとき、めりめりと板の割れる音がして、はじけるような喚声が揚がった。
「やった、やった」
「戸をこわしたぞ」
「続いて押しこむんだ」
「和泉屋のやつは鼠《ね
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