も出店があって、これもその一つじゃ。そもそも和泉屋というのは――」
 いいかけたとき、そこは楼門《さんもん》の下だった。一空さまは笑いながら、先に立って門をくぐった。
「まず、洗耳房の餓鬼どもを見てもらおう。はなしは、あとでできる。ははははは、後でゆっくり話しましょう」
 金剛寺内の洗耳房には七、八つから十五、六ぐらいの子供たちが手習いをしたり、読み方をさらったり、口論をしたり、とっ組み合いをしていたり、それはそれは大変な騒ぎであった。一空和尚の庵室なのだが、学房に当てているので、こどもたちのためにすっかり荒らされていた。
 相当広い部屋に、笑い声や叫び声が飛びかわしていた。が、一空さまとお高がはいって行くと、騒動が一時にやんだ。みんな澄ました顔をして、机にむかいだした。ふたりの来たことに気がつかない二、三人の子供だけがいたずらをつづけていた。
 一空さまが、これから、隣室《となり》にできた遊び部屋をひらくから、そこで思う存分あばれるようにいうと、わあっと歓声があがった。そして、雪崩《なだれ》を打って、となり部屋へ駈けこんで行った。お高は、子供好きの龍造寺様がここにいたら、どんなにかよ
前へ 次へ
全552ページ中325ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング