かわんまでも、相良どのは、たいそうな金持ちであったはずじゃ」
「いいえ。ちっともお金持ちでなんぞございませんでしたよ。貧乏でございましたよ。古石場の屋敷なぞ、留守《るす》がちでございましたから、それはそれは汚れて、荒れほうだいでございましたよ。
わたくしも、父につれられて、あちこち旅をいたしましてねえ、また、父は、そのほうの眼が肥えておりましたので、家には、諸国の珍しい品がたんとございましたが、わたくしが、家を畳みますときに、みんな売り払いましてございますよ」
「するとあんたは、父親が大分限者《だいぶげんじゃ》であったことに、気がつかれなかったというのじゃな」
「妙なお話でございますねえ。父は、大分限者でも何でもございませんでしたよ。大分限者どころか、ずいぶん困りましたこともありましてございますよ」
「おゆうさんは、香が好きでな。日本中をはじめ、唐《から》朝鮮の珍稀《ちんき》な香炉をずいぶんと金にあかしてたくさん集めてもっておられたが、あのうちの一つだけでも、大店《おおだな》の一つや二つには価《あたい》する大財産じゃ。あの香炉は皆どうなったかな」
「おっしゃることがすこしもわかりませ
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