、お高を悲しくしていた。父の相良寛十郎と、母のおゆうと、この一空和尚とのあいだの古傷のようなものを、和尚は、隠しているらしいのだ。お高は、一空さまとならんで歩きながら、とりすがるようにして、そのことをきいてみた。
おゆうさんがなくなる前は、わしもしばらく遠のいておったから――一空さまは、そんな答えだったが、お高は、そうして母のことをきくと、一空さまが苦しそうに見えるので、よすことにした。ことによると、母と何かあって、そのためにこの人は、出家なぞなすったのではなかろうかと、気がついた。
だがこの洒々落々《しゃしゃらくらく》とした禅の坊さまと、自分の母とはいえ、一人のおんなとを結びつけて考えるのは、滑稽《こっけい》なようにも思えた。
父については、一空さまもよろこんで話した。ふたりは、楼門《さんもん》からはいっていくために、まっすぐ金剛寺坂をおりて、いちおう金剛寺門前町の大通りへ出ようとしていた。
一空さまが、風のあいだに、いっていた。
「大名のような暮らしをしたであろうがの、あんたと父御《ててご》は」
「どういたしまして」お高は、おどろいた声だ。「なぜでございます」
「ふうむ。つ
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