失礼のないようにねえ」


    洗耳房《せんじぼう》


      一

「では、一空さまをこちらへ」
 まもなく、まるい顔に細い眼を笑わせて禅師が、その部屋にお高と向かいあってすわっていた。
「だしぬけにまいって、お邪魔ではござらぬかな」
「いいえ。どういたしまして」
 お高は、金剛寺の境内などで、両三度この坊さまを見かけたことはあったが、こうしてそばでしげしげと見るのは、はじめてであった。おかしい人だとばかり思っていたのが、何だかなつかしい人だと思った。こういう坊さまだからこそ、じぶんの費用で学房などをひらいて、近所の子供と仲よしになっているのだと思った。
「じつは、先日|洗耳房《せんじぼう》のために喜捨《きしゃ》してくれたお武家が、当屋敷に厄介になっておると聞いて、礼をいいかたがた、ぜひ見てもらいたいものがあって来たのだが、いま玄関で聞けば、あの人はもうおらんという。そこで、代わりにあんたに会うてみる気になった」
 洗耳房というのは、寺内に結んでいる一空和尚の庵室のことであった。そして、そこへ近隣の小児《こども》たちをあつめて、学問を教えているのだった。
 お高は、龍造寺主
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