と思うのだ」
 歌子は、もう晴ればれとした顔をしていた。
「承知いたしました。明晩おつれなさいまし」
 女中が茶を運んで来て、ふたりは黙って茶を飲んだ。茶を飲みながら、若松屋惣七は、考えた。この歌子と、あの紙魚亭主人の麦田一八郎と、あれほど仲がよかったのが、どうしてこう遠いこころになったのであろう。去るもの日々にうとしというだけのことであろうか。似合いの夫婦である。今度の旅の機会に、何とかまとまればよいが。
 歌子も、茶を飲みながら、考えていた。歌子は女らしい女といえなかった。こまかいことはわからないが、それでも、男のこころというものは、何という不思議なものであろうと思った。この頑固な従兄が、今になって一人の女に柔かい心を向けている。歌子は、それがおかしかった。
 そのお高に、何かしら事情があるという。事情のある女なんか、よしたがいい。歌子は若松屋惣七のためにそう思った。歌子は、簡単な女なのだ。そう思って、若松屋惣七を見ると、庭におどる日光を感じた若松屋惣七の眼が、ひくひくまばたいていた。

      三

 朝、帳場になっている奥の茶室へ、お高が仕事のことで来て、すぐ出て行こうとす
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