い方ですから、大久保の奥様も、およろこびになるでしょうし、旅は大勢のほうが、笑うことが多くて、ようございます」
「それは、そうだな」
若松屋惣七は、何か考えこんでいて、急にいたずら好きな口調を帯びてきた歌子の声に気がつかなかった。しばらくして、若松屋惣七がつづけた。
「紙魚亭は女ずきのするやつだ。お前も、長いこと彼に会わんであろう。以前《もと》は、だいぶ仲よしであったな」
「はい」
歌子は、ちょっとしおれて見えた。若松屋惣七は、急に鋭い眼を向けた。
「お前は麦田と仲たがいになっておるようだが、何か、つまらぬ争いでもしたのか」
「いいえ。なぜそんなことをおききになります」
「いや。もしそうであったら、いっしょに旅するのもいかがなものかと思って――どうじゃ、気まずいであろうが」
「決してそんなことございません。ほんとに、麦田さまはいい方ですし――」
「もとはお前、一八郎さんと呼んでおったではないか」
「でも、おたがい年をとりますし、それにこう離れていますと、だんだん遠くなりますよ。それよりお眼のほうはいかがですか」
「悪くもならんが、よくもならん」
「困りますねえ」
「困る」
「そんな
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