れることをきらってこの区別を乱そうとする大それた冒険者がお駒という形で現われたということは、彼には驚異であり、悲嘆でさえあった。
 久助はお駒ちゃんを瀬戸物問屋の吉田屋で立派な小間使いに仕立てて、やがて見込みのある番頭とでもいっしょにさせてもらって、自分は老後庖丁を離れてそれにかかろうと思っていたのだ。ところが、お目見得に行っているうちに、何かよくないことをしでかしたとかで、お駒ちゃんは吉田屋をお払い箱になったきり、家へも帰らず、そのままいなくなってしまったのだ。
 これは二年前のことで、二年後の今夜、久助が雇われて行っている拝領町屋のおせい様の家へ、おせい様の情夫《いろ》の日本橋の太物商磯屋五兵衛といっしょに、その磯五の妹として御馳走になりに乗りこんで来たのを久助が見ると、それが娘のお駒だった。
 吉田屋のことをいい出されると、お駒ちゃんは困ったように笑って、
「だって、お父つぁん、あれはしかたがなかったんだもの。へんなことがあってねえ。他の女中が悪いことをして、あたいに濡れ衣《ぎぬ》をきせたんだよ。あのまたおかみさんという人も、あんまり眼がなさ過ぎるじゃないか。そいつのいうことばっ
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