あ、そのためしも、世間にままあるのだ。おんな氏《うじ》なくして玉の輿《こし》に乗るたあ、そこんところをいったもんだろうじゃあねえか。いい引きがあって、やっと住み込ませてやったあの藁店《わらみせ》の吉田屋さん、あれはおめえ、どうして出たのだ」
 久助の話を聞いていると、下女奉公がこの世でいちばんやり甲斐のある仕事であり、出世の最好機会のように聞こえるのだ。お駒ちゃんはそれがおかしくってしようがなかったが、また、お父つぁんとしては、むりもないことだと思った。
 自分でもいっているとおり、久助は世の中の人間をかっきり[#「かっきり」に傍点]上下に二大別して、じぶんたちはその下のほうに属するもの、そしてこの区別と所属は絶対不可変のものときめて考えているのだった。それは、使用人の家として続いてきていて、いまこの久助の体内に流れている血のことばであった。
 久助にとって、まじめに奉公をして、主人と、朋輩に可愛がられて、いくらか自由のきく晩年を持って飼いつぶしにされるよりほかに、人生はないのだった。それが最大の理想なのだった。他の生き方は、考えることさえもできなかった。だから、自分の家から、人に使わ
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