ねえが、それでも、板の久助といやあ、ちったあ人様に知られもし、可愛がられもしたもんだ。
 なあお駒、いつもいうことだが、人間にあ二種あってな、人を使う身と、人様に使われる身と、これあおめえ、はっきり別れているんだぜ。そこがそれ、生まれというもんで、生まれながら人を使う上の方と、生まれながら人様に使われるおれたち風情《ふぜい》と――」
「何をいってるんだい。あたいは人に使われるなんて大きらいさ。性分だからしかたがないじゃないか」
「さ、それ、そのおめえの性分てえのが面白くねえ。まあ聞け、お駒。考えてもみるがいい。人に使われる身よりあ、人を使う身のほうがどんなにいいかしれやしねえと思うだろうが、そこが世の中でな、使われる身のほうが、使う身よりも、なんぼうか気やすで楽なのだ。
 いい家《うち》へ奉公をして、御主人様の、気に入られてみねえ、それこそ、面白おかしく日が送れて、またどんないい目をみねえものでもねえ。出世をして、人を使う身になってみたけりゃあ、そこは心がけ一つで思いがけねえ出世をしねえとも限らねえ。
 そこへいくと、ことに女子《おなご》は、野郎とは違って、大きに芽を吹くことも早けりゃ
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