かないじゃないか」
「聞けあおめえはあの磯屋の旦那の妹てえ看板だそうだが、親のしらねえ兄というのがあってたまるか。おおよそ察しのつかねえこともねえが、いってえどういうわけだ。おめえという女はしたたか者になるに相違ねえと、おれあいい暮らしたもんだが、おふくろが先に眼をつぶって、おめえのこの欺《かた》り同然のしわざを見せねえですむだけが、せめてもよ」
「そんなこといわないでおくれよ」お駒ちゃんの声はちょっとさびしそうだが、別に肉親の情愛がこもっているでもない。
「何も悪いことをしてるわけじゃあないんだもの。ほんとに、何も悪いことをしてるんじゃないよ」
「じゃあ、何をしてる。正直にいってみな。御大家のお嬢さんの装《なり》をして、金持ちの家へ客に来て、とんでもねえ化けこみをしてやがる。いっていこの二年ほど、おめえは江戸のどこにくぐって、何をしていたのだ。熟《う》んだともつぶれたとも、たより一つよこさねえのはどういうわけだ。
 おれはおめえに、できるだけのことをして、嫁の口でもあったら、相当のところへ片づけようと、そればっかりを楽しみにこの年齢《とし》になるまで働いてきたんだ、その親を置きざりに
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