していた。
父と娘《こ》
一
その灯のついている家のかげから出て来て、久助とならんで歩き出したのは、さっき拝領町屋の雑賀屋の寮から一足先に帰ったはずのお駒ちゃんであった。お駒ちゃんは手ぬぐいを吹き流しにかぶって、褄《つま》をとるようにしていた。派手な着物の柄が、やみの底にふんわり浮いて見えていた。
しばらく黙って歩いた。そこは大門町《だいもんちょう》の店屋つづきで、ごみごみした場所であった。ちょっと明るいところへ出ると、二人は、横顔をぬすみ見るつもりで、視線が合った。鋭くささやくようにいったのは、お駒ちゃんであった。
「ほんとに、あきれたもんだよ。お父《とっ》つぁん。お前、あんなところで何をしているんだい」
すると、板場の久助が、着物の上からお駒ちゃんの肘をとらえて、
「何だ、お父つぁんだと? なるほど、お父つぁんには相違ねえが、おれは、おめえのような女に、お父つぁんと呼ばれたくねえのだ。人聞きが悪い」
このお駒ちゃんと板さんの久助は、父娘《おやこ》なのだ。その父親《てておや》の久助に、こうこっぴどくいわれても、お駒ちゃんは相変わらずしゃあしゃあと
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