が、ふたりを離れさせた。磯五はその夜この拝領町屋の家に泊まった。
五
当分、いや、一生夫婦となれそうもない男に真実を示してこそ、それは、現代《いま》のことばでいえば、まず、ほんとの愛というものであろうというふうに、おせい様は考えたのだった。そう考えることによって、おせい様は、内心新しいよろこびを感じさえした。
どこまでもこの人に実を尽くして行きましょう。女が、心から男を思う途《みち》は、じぶんの望みを殺すよりほかない。それが何よりも尊いまことなのだ。恨みがましいことは一言も口に出しますまい。今夜からすこしでも変わったなどと思われないようにしましょう。この人のかなしみを自分も分け背負って、よし初めの望みどおり夫婦にはなれなくても、いっしょに、一番高い、一ばん清い恋の山路を踏み登りましょう。
それにしても、わたしたちの邪魔をして、この人をこんなに苦しめている、その、まだ生きている女房という女は、何というひどい人であろう。一眼顔を見てやりたいものだ――と、眠られないので、床のうえに起き上がったおせい様が、そばにぐっすり眠《ね》ている磯五の顔を見ながら、こんなことを考えて
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