――あなたのお内儀さんが?」
「そうですよ。知らせてくれた人があって、わたしもはじめて知って驚いているんですが――いや、仮にも女房ともあろうものが、そうして生きているくせに、今まで居どころも知らせないなんて、何ぼあんなやつでも、そんな義理知らずなことをしようとは、わたしも思わなかったものですから、てっきり死んだものとばっかり――」
「でもおなくなりなすったという報《しら》せがあったというお話でございましたね」
「それが、まちがいだったんです」
「それがね、ええまあ――」
 おせい様は、ふっとすすり泣きでもはじめそうな、動揺した表情になった。磯五は、じぶんの膝のうえにおせい様の手を拾いあげた。むりにつくったおせい様の笑顔が、磯五の顔へ寄ってきた。その耳へ、磯五がささやいていた。油を落としたような、すべりのいい声だ。
「困りました。こんなに困ったことはございません。おせい様よりも、わたしのほうが苦しゅうございます。お察しくださいまし。決して、前から知っていて、あなたに隠していたわけではありませんが、そう思われはしないかと思うと――」
「そんなことは、思いませんよ。ご存じなかったのはあなたの
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