いるのだ。その眼で見ると、高音と若松屋惣七は、大きに熱い仲であることがわかる。それはそれで、面白いことだと、磯五はにっこりして、おせい様の待っている奥の座敷へはいって行った。
おせい様は、灯をみつめてすわっていた。
磯五は、着ている洒落た着物に衣《きぬ》ずれの音をさせて、その光のほんのりしている座敷へはいっていった。
おせい様は、その男ぶりをあがめるような眼つきで、磯五を見た。磯五は、それにはわざと知らん顔をして、おせい様の近くへ行ってすわった。やっと二人きりになったとき、相手の期待に反して、ときどきわざとよそよそしいふうを見せるのが、ますますその女をたまらなくさせるのだった。こうして、女のほうから追っかけて来るようにしむけるのが、磯五の手だった。
「どちらか湯治にお出かけになるというようなおはなしでしたが――」
磯五がいった。おせい様はそれに答えるまえに、お駒のことをきいた。おせい様は、真剣にお駒ちゃんのことを心配しているのだ。
「お帰りになりましたか。たいしたことでなければよろしゅうございますがねえ」
お駒ちゃんのことなど、もうけろりと忘れていた磯五は、びっくりした。
「
前へ
次へ
全552ページ中263ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング