ょうちん》かい」
「へえ」
「あすこならたいしたもんだ。こんな素人家へなんぞ来るのはもったいないぜ」
「あすこに十二年おりやした」
 その石町の大提燈というのは、そのころ石町に、檐《のき》に大提燈をつるした、名代のうまいもの屋があった。その家のことだった。
「そうかい。どうしてやめたのかい」
「代が変わって、そりが合わねえから、面白くねえので思い切って引きやした。それから、ふか川のほうに、自前で店をやってみましたが、この年齢《とし》じゃ、若えもんのあいだにまじって、河岸《かし》の買い出しをするのも、骨でがす。そのうちに、こちら様で板場を探しているてえことを聞き込みましたので、ここから葬式を出していただくつもりでまいりました」
「そうかい。そりゃあまあ、いいことをしたよ。おめえなんざあ年のわりにぴんしゃんしてるけれど、これで、荒い仕事をするよりは、ここらへ住み込んで、爺《じい》や爺やと気に入られて日を送ったほうが上分別よ。
 おせい様は、奉公人の出し入れがきらいで、長くいる者は眼をかけて、そりゃあ可愛がるのだ。おれもそうだ。お前もこれで、身のふり方がきまったというものだろう。ゆくところへ
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