人役としての小さな自慢であった。磯五もそれにほほえみ返していた。
 お駒ちゃんだけが無言をつづけていた。いったいお駒ちゃんは、磯五とおせい様がいるところでは、いつもあんまり口をきかないのだ。つんとして黙っているか、しょんぼりほかのことを考えてるのだ。おせい様のようないい生活を知っている人のまえへ出ると、お駒ちゃんはひけ目を感じて、ただぼろ[#「ぼろ」に傍点]を出さないように気をつけるだけが精いっぱいなのである。それが、ときによって、お駒ちゃんをいじらしく見せていた。
 が今夜はそれとも違う。お駒ちゃんはやっぱり気持ちの悪そうな顔をして、黙りこんでいるのだ。
 へんに思って、それとなく磯五が注意していると、お駒ちゃんはときどき眼を上げて久助を見るのだが、その視線が異様なのである。久助が銚子を持ってお駒ちゃんの前へ出て、
「一つお重ねなさいまし」
 というと、お駒ちゃんは妙にびっくりして、恐ろしいような、苦いような顔つきをした。よっぽどどうかしている。つれて来なければよかったと磯五は思った。
 膳が引かれると、おせい様とお駒ちゃんは顔を直しにほかの部屋へ出ていった。磯五はやかましいことをい
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