といったのは、あれは人違いだったのかえ」
「なんの。人ちがいなものか。おれには、立派な女房があるよ」
「あれ、また、どこまでうそで、どこから、ほんとなんだか――」
「なに、うそなもんか。これ、このとおり、ここにお駒ちゃんという、れっきとした女房があらあね」
「そんな見えすいたうれしがらせは、いやだよ。憎らしいねえ」
「うんにゃ。うれしがらせじゃあねえ。おらあほんに女房と思っているのは、お駒ちゃんだけなんだ」
「だけ[#「だけ」に傍点]は心細いね。そんなにほかに、女房と思う女があられて、たまるもんかね」
「こいつあまいった。だからよ、だから機嫌を直して、さっさと支度をしねえな。忘れちゃいけないぜ。今夜はおれとおめえと、おせい様んところに晩めしに招《よ》ばれてるんだ」
「ごまかしっこなしにしようじゃないか。ほんとに、お前さんには、どこかにおかみさんがあるんじゃないかい。あたしゃどうも、そんな気がしてしようがないんだけれど」
「うたぐりぶけえなあ。おいらあ女房なんて、そんなものはありはしねえよ」
「だって、いま来た人が、このあいだ、神田とかで会ったというじゃないか」
「だから、それがどこの馬
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