ているようでも、案外すれていないということであった。
 もう一つの印象は、この人はいやしい生まれではなく、ことにその母親は、単純な美しいたましいの所有主であったろうということだ。じっさいお高は、龍造寺主計の生母を想像してみた。それほど、不思議なくらい天真|爛漫《らんまん》たるものが、その恋を打ちあけた龍造寺主計のことばからにおって、お高をつつんだのだ。
 お高が困ってもじもじしても、龍造寺主計は平気だ。他人のことのように、つづけた。「聞きなさい。発足の前の晩にこんなことをいうのは、急に思いついたようで、おかしな男だと思わるるかもしれぬ。しかし決して思いつきではない。ただ、掛川へ行くまえに、あんたの心を聞いておきたいだけじゃ」
 決して思いつきでないことはよくわかっております。お高はそういおうとしたが、龍造寺主計が続けて口を開きかけたので、ことばを控えた。
「江戸へ参って、当家へ来たとき、すぐにいえばよかったのだ。あんたを見るとすぐ、わしはあんたが好きになったのだから――といってあすの朝までに型ばかりでも婚礼の式をなどというのではない。ただ承知さえしてくれれば、わしのほうから若松屋どのに
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