日本ばし式部小路の磯屋の店だ。いそやと書いた暖簾に陽がにおって、天水|桶《おけ》と柳と、行人と犬の影が、まえの往来に濃いのだ。
 ひるさがりだ。磯屋五兵衛が、奥の居間へはいって行くと、そこには、雑賀屋のおせい様のてまえ妹ということに触れこんであるお駒ちゃんが、膝がしらがのぞくほどだらしなくすわって、何か反物をいじくっていた。
 はいって来た磯五を見ると、ふたつの眼《まなこ》に媚《こ》びをあつめて、にっと笑ってみせた。
 磯五はすぐ、あきらかに不愉快な顔をした。たたみを蹴るように、部屋じゅうをあるきまわって、お駒ちゃんがひろげている反物へ、眼をおとした。
「ちっ! へまばっかりやるじゃあねえか。あきれけえって、口もきけねえや」
 かみつくようにいった。お駒ちゃんは、平気の平左だ。
「何がどうしたっていうのさ。いつもいつも、がみがみいうばっかりで、ほんとに、面白くない人って、ありやしないよ――いったい、この反物のどこが気に入らないっていうんだろうねえ」
「どこも、ここもありあしねえ。そっくり気に入らねえんだ」磯五は、何か、炎のような怒りに、つつまれてゆくように見えた。「そんなさばけ
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