と、若松屋惣七どのと知恵をあわせて」
「そのおことばひとつが、頼みでございます」
「うむ」龍造寺主計は、うなずいて、「若松屋惣七という人物は、知れば知るほど、このましい人物である」
「旦那さまと近しくなすっていらっしゃるお方は、みな様そうおっしゃいますでございますよ」
「いや、そればかりではない。なぜわたしが、若松屋惣七どのに肩を入れるか、あんたには、そのわけがおわかりかな」
「御気性が、おあいなさるのでございましょうよ」
「それもあろう。が、第一の理由は、これまでよくあんたのめんどうをみてきてくれたからだ」
お高は、ぱっと赧い顔になった。身をすくませるようにした。
龍造寺主計は、お高のほうへ、平気な顔をつき出していた。
「お高どの、あす発足《ほっそく》じゃ。その前に、ぜひ一つ、きいておきたいことがある。そのために、ちょっとここへやって来たのじゃが、どうだ、わたしのところへ、嫁にきてはくれぬかな」
龍造寺主計は、お高と若松屋惣七との関係を、知らないのだ。まるで、猫《ねこ》の仔《こ》でももらいうける交渉のような、こともなげな切り出し方だが、ふとい声が、ふるえていた。
前へ
次へ
全552ページ中219ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング