い様の取り立てごとが一段落ついて、お高は、はじめてじぶんのことを考える余裕を持っていた。しかし、将来を思ってみても、こういう生活の連続のほか、何もないような気がした。すこしも、楽しいこころにはなり得なかった。
 人がはいって来たので、そっちのほうへ向けたお高の顔は、蝋細工《ろうざいく》のように澄んで、生気がなかった。口のまわりに、このあいだまでなかった皺《しわ》のようなものが、かすかにできかけていた。
 はいって来たのは、龍造寺主計であった。龍造寺主計は、お高を見ると、びっくりしたふうで、いった。
「どうなすった。顔いろがよくない」
「さようでございますか。じぶんでは、何ともございませんけれど」
「何ともなければよいが」龍造寺主計は、敷居ぎわに腰をおろして、縁へ足を投げ出した。「できましたか」
 それは、お高の縫っているもののことであった。お高は、あした旅立つ龍造寺主計のために、肌襦袢《はだじゅばん》を何枚も縫ってやっているところであった。
「もうすこしでございます。こんなに着がえがございますから、たびたびお着かえなさらなければいけませんよ。あなた様のように、一つをいつまでも着ていらっ
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