、若松屋が一時浮かぶ。わしの身も、まず固まる。とならば、両得である。武士というものがいやになっておる点にかけては、わたしも、若松屋に負けぬつもりだ。
しかし、その、きちがいになった東兵衛という男に、出した資金《もとで》をすっかり返してやって、そのうえ、具足屋の借財を一身に引きうけるとは、若松屋惣七という男は、涼しい気性の男だな。いささか涼しすぎると申してよいぞ。若松屋惣七ともあろう腕ききのしたことともおぼえぬが、まず、そうあってこそ、若松屋惣七の若松屋惣七たるゆえんであり、世の中も、面白いのであろうな」
龍造寺主計は、あははと笑った。
四
龍造寺主計は、そのままずるずるべったりに、若松屋惣七方の客となって、四、五日を過ごしたが、毎日のように出歩いていて、お高とも、惣七とも、その後会って、くわしい話を聞くというのでも、するというのでもなかった。
四、五日たって、ぶらりと、奥の惣七の居間へあらわれた。その龍造寺主計は、若松屋惣七のひそみにならって、一思いにさむらい稼業を廃業した龍造寺主計であった。あたまも、いつのまにか、町人ふうに結いなおしていた。着物も、どこでこし
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