の店を手放さなければならない。買い手の見込みも、ついている。それが、雑賀屋のおせい様へ金をそろえる唯一の途《みち》なのだ。と、聞かされていたときなので、無遠慮に割り込んで来た龍造寺主計も、眼にはいらないふうだ。
 押えても、泣き声になってきた。
「どうしても、そうなさるよりほか、方策がないものでございましょうか」
 若松屋惣七は、帰ろうとしている龍造寺主計をとどめながら、お高のほうへも答えようとした。が、龍造寺主計に、気を兼ねた。
「何だ。そんな内輪の話は、あとでしなさい。失礼ではないか」
 龍造寺主計は、これを聞くと、部屋の一隅《いちぐう》へさがって、壁によりかかって、すわった。不思議そうな顔をして、腕を組んで、ふたりを見くらべはじめた。
 他人のことは、すなわち自分のことであると、いっさい自他無差別の一種の生活信条を持っている、この龍造寺主計である。黙って、お高と、若松屋惣七の会話《はなし》を、聞き出した。
 また、そこにそうしていても、妙に邪魔にならない存在なのだ。
 若松屋惣七が、お高にいっていた。
「商売を売るより、ほかに途はつかないのだ。で、売ります。売って、からだ一つにな
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