をこの急場から、救いさえすればいいのだ。それには、どうしたらいいか。若松屋惣七は、まだあのおせい様の手紙を見ないのだから、おせい様が矢のように金の督促をするかげに、磯屋五兵衛が糸を引いていることは知らないのである。
これだけは知らせたくないと思って、お高は、こんなに苦心をしているのだが、ああしておせい様のほうが、だめになった以上、今度は、磯五ひとりに会って、まごころをこめて頼むよりほかはあるまい。まごころは必ず人を打って、人を動かすはずである。磯五とて、人間には相違ないのだから、ことによったら理解をして、おせい様を通して若松屋さまをいじめることを思いとまってくれるかもしれない。いや、きっと思いとまらせてみせる。
とお高が、頼みにならないことを頼みにして、やっと自分を励ましているときに、庭の草を踏んで来る跫音《あしおと》がした。滝蔵だ。
「旦那は、まだお帰りがねえようだが、おそいことですね」
「どちらへおまわりになったのか、わたしにも心あたりがないのですよ」
「それはそうと、いまどこかの守《もり》っ娘《こ》が使いに来ているのです。誰か、男の人に頼まれて、お前様を迎えに来たとのことで、
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