。火もちがちがいますからねえ」
「火もちがちがいますよ」
「粉炭は、便利ですから、いつもの笊《ざる》へあつめといてくださいよ」
「こな炭は、便利でさ」
炭屋の若い者は、おなじことを繰りかえしていった。お高は、笑いながら、[#「笑いながら、」は底本では「笑いなが、ら」]家のなかへはいった。ちょっと自分の部屋へ寄って、顔をなおしてから、客が待っているという、中の間の座敷へ行った。そこは、先日、磯五がはじめてあらわれて、このごろのさわぎの発端となった、あの座敷だった。
お高が、縁側を進んで行って、敷居ぎわに手をつくと、そっちへ足を向けて、大の字なりに寝ころんでいた男が、むっくり起き上がって、あぐらをかいた。それは、龍造寺主計《りゅうぞうじかずえ》であった。
お高は、びっくりした。龍造寺主計も、不意に現われたお高を、まぶしそうにながめて、つづけさまに、眼《ま》ばたきをした。伸びをした。
「つい眠《ね》たものとみえます。御主人が、おかえりになったのですか」
「いいえ、若松屋さまは、まだおかえりになりませんでございますけれど、御用は、わたくしが、伺っておきますように、しじゅういいつかっており
前へ
次へ
全552ページ中159ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング