帰りになっていることであろうから、いっそすぐお眼にかけようと決心した。
五
お高は、うら口からはいって行った。そこだけは、雲のきれ目から、うす陽がさしていた。佐吉と滝蔵が、傘と足駄《あしだ》をならべて、ほしていた。炭屋が来ていた。炭屋は、切った炭に、井戸から水をくんで行って、かけていた。
誰も、お高がかえってきたことに、気がつかないようすだ。みんなで大声に、たれかのうわさをしていた。旦那やじぶんのうわさをしているのだと、気まずい思いをさせると思って、お高は、うら庭へはいるとすぐ、声をかけた。
「みなさん、よくお精が出ますよ」
ふたりの下僕《おとこしゅ》と炭屋は、びっくりして挨拶した。
「おかえんなさい」
「旦那さまは?」
「まだお帰りではねえのです。半刻《はんとき》ほど前から、お客さんが見えて、待っていなさるけれど」
「あれ、お客さまというのは、どなた」
「名はいわねえのです。おっかねえさむれえですよ」
お高は、若松屋惣七の武士時代の友だちがたずねてきたのだろうと思って、不思議に思わなかった。炭屋の若い衆へ、笑いかけた。
「そうですよ。水をかけておいてくださいよ
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