は、可哀そうなやつでございます。わたしの心がらから、おんば日傘《ひがさ》で育ったあいつにまで、えらい苦労をかけました。わたしが京阪《かみがた》のほうに行っているあいだあいつを、この江戸に、ひとりで残しておいたものです。で、まあ、早くいえば口すぎに困ったのでしょう――」
「あの、いたいけなお駒さんがねえ。まあ、おかわいそうに。聞いただけで、おせいは、泪《なみだ》がこぼれますよ」
「はい。そうおっしゃってくださるのは、おせい様だけです。わたしも、きょうというきょうだけは、男泣きに泣かされました――それで、あいつも、背に腹はかえられず、素性をかくして、下女奉公とまで身を落としたのだそうです」
「その住みこみなすった先が、吉田屋さんだったのですねえ。あそこは、大店で、人の住まいが荒そうですし、それにあの、お民さんというお人が、気はいい人なのですけれど、ああいうしゃきしゃきしたお人でございますから、お駒さまも、どんなつらい目をみなすったことか、お察しできますでございますよ」
「はい。それはもう、朝から晩まで、つらいことだらけだったそうで、それに、もともと下女に出る生まれではないものですから、いっ
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