のほうで、江戸のあきんど衆に顔の知れているお方、そういうお方が、御入要なんでございましょう?」
「そうだ、そうだ。そういう人物をたよって、行きたいのだ。その、貴様が思い出したというのは、名は何といい、いずくに住まっておるか」
「ようがす。そういうお方なら、江戸に有名なお方がございます。小石川でございます。小石川の上水端に金剛寺というお寺がございます」
「うむ。曹洞派《そうとうは》の禅林である。聞こえた名刹《めいさつ》だな」
「へえ。その金剛寺の裏手でございます」
「うむ」
「若松屋惣七さまとおっしゃるお方で、あのへんでおききになれば、すぐおわかりになりますでございます」
「さようか。かたじけない」
 おやじのまえの腰掛けのうえに、ばらばらとたくさんの小|粒《つぶ》がおどった。龍造寺主計は、乞食浪人のように見えるのだ。が、龍造寺主計は、金を持っているのである。内実は、裕福なのだ。

      三

 磯五が、拝領町屋のおせい様の家へ引っかえしたときおせい様は、おなじ座敷にすわって、ぼんやり庭を見ていた。磯五がはいってくるのを見ると、いそいそ迎えに立とうとした。磯五はてかてか光る顔を笑わ
前へ 次へ
全552ページ中150ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング