蠅のようなお方――」
「そうだ。貴様は、汚物《おぶつ》のうえにたかる銀蠅《ぎんばえ》を、知っておるか」
「存じております」
「そのぎん蠅と同様に、しじゅう小判の集まるところにぶんぶんいうて飛んでおるやつだ」
 おやじは、笑いだしていた。
「それはお武家さま、御無理でございますよ」
「なぜだ」
「なぜと申して、考えてもごろうじろ。きたないものに蠅がたかりますように、お金のあるところに人が集まるのは、当節の風《ふう》でございます。あなた様のようなことをおっしゃっては、江戸じゅうの人間が、みんな小判の蠅でございますよ。そのようなことは、人をおさがしなさいますうえに、ちっとも眼当てになりませんでございます」
 おやじも、ひまなので、相手になっているのだが、これを聞くと、龍造寺主計はふわふわと鼻の穴から笑声を押し出して、
「なるほど。いっぽん参ったわい。貴様は、なかなか気骨があるぞ」
 ひどく面白そうだ。おやじも、乗り出して来た。
「お武家さま、へっ、思いだしましたよ。ひとり、思い出しましたよ」
「そうか。思い出したか」
「思い出しましたよ――つまり、何でございましょう? ひろくお金を扱って、そ
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