、口がわるいのが病《やまい》で、人にいやがられているのでございますからねえ、わたしからこんなにあやまっているのでございますから――」
おせい様は、磯五のきげんを直そうとして、おろおろ声だ。磯五といっしょに、お駒のせなかをさすって、抱き起こした。お駒は、たもとで顔を隠していた。憤然とさきに立って部屋を出ながら、磯五がおせい様にいやみをいっていた。
「おかげで、いい恥をかきましたよ。人の妹をつかまえて下女奉公に出たことがあるの、おまけにぬすっとうを働いたの何のと、あの吉田屋のお内儀には、いずれとっくり[#「とっくり」に傍点]この返礼をするつもりです」
どなるような大声だから、おせい様はいっそうみじめに狼狽して、まだ泣きじゃくっているお駒を抱かんばかりにして玄関まで送り出た。履物をはきながら、磯五がいった。
「いたって気の弱い娘《こ》ですから、ああいうひどいことをいわれると、こたえます」
「そうでございますよ」おせい様は、男の気を直そうと、一生懸命だ。「おとなしいお方だけに、くやしさも一しおでございますよ、ねえ――それはそうと、お前さま、ほんとに戻ってくるのでしょうね。待っていますからね
前へ
次へ
全552ページ中143ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング