え」
「はい。お駒を店へ送り届けて、その足で引っかえしてまいります」
急に赧い顔をしたおせい様から、残っている色気が発散した。それは夕やけのようにはかないものだ。
「だまかすとききませんよ」
おせい様は、帰って行くふたりを、心配そうに見送った。いつまでも上がり口に立っていて、奥へはいらなかった。
お駒は、まだ顔をおおったまま磯五に注意されても、おせい様に挨拶もしないで、出て来た。
拝領町屋の横町をまがって、雑賀屋の寮が見えなくなると、磯五はぐいとお駒ちゃんの腕を握った。磯五は、どういうわけか、このお駒のことを、ふたりきりでいるときは、お駒ちゃんと、ちゃんづけにして呼ぶ習慣なのだ。
「ほんとか、あのことは」
お駒ちゃんは、長い袂《たもと》をぴらしゃらさせて、くっくっと咽喉で笑っているのだ。
「みんなほんとですよ。ちょいと吉田屋へ住みこんで小さな仕事をしたのが、へまをやって、ばれたことがあるんですよ。いやなところへ、いやなやつが出て来たもんだねえ」
磯五は、ひとごとのようにいうお駒ちゃんの顔を、横眼ににらんで、ならんであるいた。おしろい焼けのしたお駒ちゃんの顔は、ことに頸《くび
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