骨で豪放なのだろう。精悍《せいかん》な相貌《そうぼう》をしている。顔ぜんたい、大あばただ。
 品川《しながわ》まで来ると、八《や》ツ山下《やました》の、ちょっと海の見えるところに、掛け茶屋が出ているから、龍造寺主計は、そのまえに立ちどまって、
「おい」
「いらっしゃいまし。おかけなさいまし」
「そうしてはおられん。つかぬことをきくようだが、江戸で人をさがすのに、何かよい工夫《くふう》はないかな。だれか顔の広い人物があったら、教示にあずかりたい」


    仇人《きゅうじん》


      一

 吉田屋のお民が、お駒を、お目見得泥棒とののしって、席をけたてるようにしてかえっていったあとだ。磯五は、うつ伏しているお駒の背に手をかけて、おせい様にいった。
「ひとまず、これをつれて帰って、また参ります」
 おせい様は、お民のことばで、磯五が感情を害しているに相違ないと、それをおそれているのだ。
「お駒さんは、気が顛倒《てんとう》していらっしゃるのですよ。かわいそうに、誰でもあんなことをいわれれば、気が顛倒しますよ。お駒さんも磯屋さんも、気にかけないでくださいましよ。あのお民さんという人は
前へ 次へ
全552ページ中142ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング