いって、畳に突っ伏して、泣きじゃくっている。おせい様は、磯五の気を害することを専心おそれて、浪《なみ》打っているお駒の背を、一生懸命になでて、慰めていた。が、お駒は、ほんとは泣いているのではなかった。そうやって顔をかくして、上手《じょうず》にごまかして、笑っていたのである。お民は、決然と席をたって、帰りかけていた。
「おせい様、わたしは、おまえさまの腑甲斐《ふがい》ないのが、歯がゆくてたまりませんよ。とにかく、あしたの朝早く、伊万里のほうへ行きますからね、また帰ったら、寄せていただきますよ。そのときまでには、このことも、はっきりわかっていることだろうと思いますよ」
おせい様をふり切るようにして、お民は、そそくさと帰って行った。
龍造寺主計《りゅうぞうじかずえ》が、東海道から江戸へはいったのは、この、お民が、おせい様の家から、そそくさと帰ったころだった。
龍造寺主計は、どこの産ともわからない、諸国放浪の浪人だ。年のころは、三十五、六であろう。中肉中背のからだを、風雨と汗でよごれた旅装束につつんでいるのだ。ばかに長い刀をさしているせいか、武骨《ぶこつ》で豪放に見えるのだが、人物も、武
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