「いやですよ。女中のまねなんぞしては、まあ、おはいりなさいよ。うちの人同様の人たちばかりですから、ちっとも構いませんよ」
 お民は、にこやかに笑ってはいって来て、すわった。お民は、お店の女房らしい、渋い、美しい年増だ。ふところから、紙にはさんだ煙管《きせる》を取り出して、手あぶりの火で、一服つけた。そして、
「いえね、あした早く発《た》って、旦那といっしょに伊万里《いまり》のほうへ年例の仕込みにゆきますからね、ちょっとこの前を通ったついでに、しばらくのお別れに寄ってみましたのさ」
 といいながら、なにげなくお駒のほうを見ると、あらと驚いたお民の手から、きせるが落ちた。
「おや! この人は――?」
 ぽかんと口をあけて、お駒とおせい様を、比較するように見た。
 お駒は、今お民がはいってきたときから、あおい顔をして、まごまごしていたのだ。おせい様が、吉田屋のお民さんじゃあありませんかといったときは、のけぞるほど、ぎっくりおどろいたようすで、あっと小さく叫んで、あわてて立ち上がろうとさえしたくらいだ。そこらへ、隠れでもするつもりだったのだろう。こまかくふるえ出したのを、磯五がきっと[#「き
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