、おせい様と磯五とお駒のあいだに、これから、くつろいだはなしがはじまろうとしていた。磯五は、お高のことはいま話題に上《のぼ》さないほうがいいと考えて、しっきりなしにほかのことをいいだしていたが、心では、あのお高が何しにこのおせい様のところへやって来たのであろう、何を話して行ったのであろうと、それが、すくなからず気になっていた。
 おせい様は、磯五の顔を見て、お高によって一時植えられた疑念など、けろりと忘れて、酔ったように上きげんなのだ。お茶を呼ぶつもりで若やいだ態度で手をたたいたりした。
 その、手をたたく音を縁を進んでいたお民が聞いて、冗談好きのお民が、お茶屋の仲居をまねて、
「へえーい」
 と長く引っぱって答えると、近いところで、うちの者でない人の声がしたので、おせい様は誰のいたずらであろうと、びっくりした。そこへお民が、あいそよくはいって行った。
「お呼びでございますか。というところでございますね。こんちは」
「あらあら、まあまあ、吉田屋のお民さんじゃあありませんか」
 おせい様も、はしゃいだ声を出した。おせい様は、このお民に対してだけは、友達ずくに、すこし、ことばをくずすのだ。
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